ハロー!うくれれです。
体の不自由な人が特別に駐車することができる障害者用パーキングは、片足のない私にとってありがたく便利なスペースです。
義足で外出するようになってから、ほとんど毎日ロングスカートで過ごす日々で、はたから見れば足がちゃんと2本ある人に見える私。
障害者用のパーキングに駐車すると、正義感あふれる優しい人たちから怒られる時があります。
今回は、大人になってから知らない大人に怒られる切ない体験と、泣く子も黙る水戸黄門様になった義足ユーザーのお話をどうぞ。
障害者用パーキングで振りかざす間違った正義感?傷つけ合ったおばさんと義足ユーザーの話
もともと生まれ持った2本足で歩いていたころに比べ、義足を使うようになってから歩きにくさや足の痛み、疲れを感じやすくなりました。
そんな私にとって、ショッピングなどでお店の入り口近くに駐車できる「障害者用パーキング」はとてもありがたい存在。
毎回利用するわけではないけれど、他にスペースが見つからないときや、雨が降っていて地面が滑り危ない時などは駐車するようにしています。
まだ義足をつけて外出できるようになったばかりの頃、近所の大型ショッピングモールに家族4人で出掛けた時のこと。
週末だったこともあり、駐車場はコミコミで、一般のスペースを探すも入り口からかなり遠い場所しかありません。
すると目の前に障害者用パーキングのスペースが一つ空いていたので、ちょうどよいと思って駐車することにしました。
車を停めてから、パーキングを利用できる許可証をバックミラーにぶら下げ、子どもたちを車から降ろそうとしていた時、後ろの方から知らない人に話しかけられたのです。
「ちょっと、あなたたち、、、」
声をかけられて振り向くと、そこには知らないおばさんと、その息子(多分中学生くらい?)が立っていました。
おばさんはちょっと興奮気味の顔で、運転席から降りてきた旦那にこう言いました。
「ここは体の不自由な人が車を停めるためのスペースだってこと、知ってる?」
おばさんの様子から、私達がこのパーキングを利用する資格はないのに、ルールを破って駐車している悪い奴だとと決めつけているような感じ。
私は怒りの沸点が結構低くて、事後数時間たってから怒りがこみ上げるような感じの性格なので、「おばさんが言わんとすることはわかるけど、私足がないねん、、、」と心の中で思うだけ。
しかし!!瞬間湯沸かし器と対決したらぶっちぎりで勝てるほどキレやすい旦那は、おばさんの言葉を聞いた瞬間に
「こっちは許可証ちゃんと出しとんねん、よぅ見ろやこのくそババァ!事情も知らんと勝手に判断しよってからに、目ん玉くりぬいてカラスに食わしたろか!」
(英語だったから何て言ったか覚えてないけど、勢いはこのくらいあったと思う)
旦那がブチ切れた途端、なぜか私も反論せねばと思ってしまい、
「こらババァ見ただけでワシのこと知ったような言い方すんなやワレ!鉄パイプの足見せたらぁ!」
(英語だったから何て言ったか覚えてないけど、勢いはこのくらいあったと思う)
今考えても、お上品な私がやったとは思えないようなブチ切れっぷりです。
おばさんはいきなり降り注ぐ罵倒の嵐にビックリした様子を隠せずに、
「ちょっとおかしいなと思っただけよ、ご、ごめんなさい~~」と言いながらショッピングモールの中へと入っていきました。
隣にいたおばさんの息子は「やべぇやつに絡まれた!」と、人生で初めて体験する異種の恐怖がしばらくトラウマになったことでしょう。
おばさんを見送ってから落ち着いた時に旦那が「あんな奴の言う事気にすることないよ」と私をなだめたのですが(ブチ切れしたのはあなたですけどね?)
やっぱりすごくショックで、おそらく旦那もショックだったのだと思います。
まだ足をなくしたことに対する気持ちの整理もしっかりしていなかったし、私達夫婦は、あのころすごく傷つきやすくて、とってもセンシティブだったから。
おばさんは、当時の私達にとって一番触れてほしくなかったところにずけずけと土足で入ってきたというわけ。
その日は一日中、あのおばさんに言われたことを頭の中で繰り返し考え、数日間はずっと頭の片隅にあのおばさんがいました。
しまいには「あの時こういえば、おばさんを黙らせて後悔させることができたのに」というように、頭の中でどうにかしてあのおばさんをギャフンと言わせたい欲望にかられ、グルグルぐるぐる考えてみたり。
人間って、傷ついてしまったらどうにかしてそれを癒そうと、無駄だとわかっている思考を繰り返してしまうんですね。
同様に、ちょっと注意しただけなのに罵倒されて怖い思いをしたおばさんも、私達の事を考えてしばらくは気持ちが暗くなっていたことでしょう。
親切心が裏目に出て、お互いに傷つけあってしまったあの事件。
今考えるとね、ショックだったとはいえあそこまで言わなくてもよかったかもしれない。
でも、あのおばさんは私たちの車にある許可証を確認することなく、先入観で注意してきたのだから。(私たちがアジア人だったというのもあるかも)
そもそも障害者用パーキングに駐車する人は何か事情があるからであって、全員が一目瞭然だとは限らないですよ。
そういうのを知らずに正義感を振りかざすのはいかんよ。
注意する勇気や正義感にあふれているのなら、その前に、自分が間違っていないかということを確認する位の工程は踏んでもイイのではないかな。
あのおばさん、あの日を境に障害者用パーキングで誰かに注意するということはなくなっただろうね~と思っています。
また別の日は、家族で公園に遊びに行った時に同じように注意されました。
注意してきたのは(また)おばさんで、前回の人と同じ様に「そこは障害者用パーキングだけど、分かってる?」と言われました。
この状況は一度経験済みなので、焦ったり動揺することはなかったため、「うん、わかってるわよ」と無表情で返事をした私。
注意してきたおばさんは、ばつの悪そうな、でも納得いかないような顔をしていましたが、私がはっきりと「分かって停めている」というもんだから、それ以上何も言わずに退散していきました。
おばさんはその直後、ミスターウィッピーの列に並んでいったのですが…。
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ミスターウィッピーとは
ニュージーランドで有名な移動式アイスクリームのフランチャイズチェーンのこと。
夏になると公園やビーチなどの駐車場に現れるため、子どもにおねだりされた親たちがアイスクリームを買わされる羽目になる。
ミスターウィッピーはだいたい駐車スペースに停車し、遊んで体が火照った子供たちを甘いアイスクリームで誘惑します。
その日のミスターウィッピーは入り口の近くに良いスペースを見つけ、商売をしていたのですが。。。
さて、ここで問題です!
【問題】
先ほど障害者用パーキングについて注意してきたおばさんは、ミスターウィッピーに並んでいる時、どこに立っていたでしょうか?
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ・・・・
正解は・・・
「障害者用パーキングの上」でした!
お~~~い!!
いやいや、それは違うでしょう、おばちゃん。
あんまり呆れてしまって、そのまま見過ごしたんですけど、後で考えたら並んでるおばさんに「ミスターウィッピーにもパーキングの事注意してくれるかしら?そんであんたどこに立っとんねん?」って言ってやればよかった。
ミスターウィッピーのおばさんは、ショッピングモールで傷つけあったおばさんよりよっぽどたちが悪いよ。
人のふり見て我がふりなおせ・・・ではないけれど、自分もおばさんたちの様に良かれと思ってやったことが実は誰かを傷つけていたという事もあるかもしれないなぁ。
正義感とか、親切とか、思いやりって本当に難しいものだなと思います。
障害者用パーキングで怒られ続けた義足ユーザーが水戸黄門になった日
そんなこんなで注意されるのに嫌気がさし、障害者用パーキングを利用するのを躊躇し始めていた私ですが、困っている時は素直に利用しようと。
ある日スーパーマーケットに買い物に行ったのですが、その日は雨が降ったりやんだりのお天気だったので、安全のために障害者用パーキングに車をとめました。
買い物が終わって車に荷物を詰め込んでいる時、同じく障害者用パーキングスペースに車を停めていたおばあちゃんから声を掛けられました。
「ちょっとあなた、ここのスペースは体が動かしにくい人のためにあるんですよ。」
やっぱりこのおばあちゃんも、私の外見や動きなどで判断し、ルールを破って駐車していると思い込んでいるみたい。
同じ経験も3度目となると「おいおい、勘弁しておくれ」という気持ちが湧いてきますよね。
おばあちゃんには「そうね、知っているよ。」と返事をしましたが、なかなか引き下がらない。
もう一度同じやりとりを繰り返した後、おばあちゃんはきっとこう思ったのでしょうね。
おばあちゃんの頭の中:(この人、体が悪くないのに、障害者用パーキングを使って堂々としているわ。もしかして、体が悪いってどういうことか知らないのかしら?)
そしておばあちゃんはくぎを刺すようにこう続けました。
「ほら、私のような歳を取った人たちとか、体が不自由な人たちのための駐車スペースなのよ?」
会話が成立しているんだけど、成立していないような不思議な状態だったし、おばあちゃんを何とか納得させるすべはないかと考え、仕方なくスカートをめくって義足を見せることに。
花柄のスカートに隠された鉄パイプを目にしたおばあちゃんは、まさに息をのんで言葉を詰まらせました。
そして、「ごめんなさいね、ほら、このスペースに駐車する人って、いつも私みたいなおばあさんたちだから、若いあなたがどうしてって思って、ね。ホントにごめんなさいね、失礼しました、およよ。」と言いながら、後ずさりして車に乗り込んでいきました。
めちゃくちゃ申し訳なさそうにする姿にこちらも申し訳なく思ってしまいましたが、なんだかこの状況、どっかで見たことあるなぁ。
まさに、水戸の黄門さまが悪代官一味と闘った後に、最終兵器の印籠を出した瞬間ではないですか。
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(ちょっと待って、いつの間にか黄門さまが武田鉄矢さんになってる!?)
そう、あの雨の日、異国の地にて、私は、水戸黄門様になったのです。
あれ以来何度か同じようにパーキングについて声を掛けられましたが、印籠を見せればみんな納得して、ひと言謝罪してくれるようになりました。
面倒で気が滅入るような会話を交わさず、一発で納得してくれるのでとても便利だし、良いと思って声掛けした方も、声をかけられた自分も余計な不快感を与えあわずに終わりますから。
本当はこういったやりとりが無いのが一番なんですけどね、障害者用パーキングの性質上、それは難しいのかな。
まとめ
いくら印籠を持っているとはいえ、やっぱり障害者用パーキングの利用は躊躇してしまいますね。
私だって、ロングスカートで覆っている秘密を、縁もゆかりもない他人に、わざわざ見せたいとは思いませんから。
こういった声掛けをする人達は、せめて許可証があるかを確認してみるとか、正義感の前にその人の背景に心を配るというワンクッションを置いて欲しいと思いました。