ハロー!うくれれです。
義足を使うようになってから早5年経ち、ほとんどのことが以前と変わらずにできるようになりました。
ここまで来るまでにいろいろな失敗や驚きがありましたが、ほとんどできるようになったとは言いつつ、やっぱりいまだに大変なことやできないこともあります。
ほんのちょっとのことなんだけど、生活の中で制限されてしまうと戸惑うシーンってたくさんあるんだなと、義足になってしみじみ感じる今日このごろ。
そこでこの記事では、義足になって大変なことを、家の中や屋内にフォーカスを当ててつづっていきたいと思います。
義足での日常生活、特に室内で大変なことについて知りたい方の参考になれば幸いです。
Contents
義足で大変なこと【室内編】正座・スリッパ・かがむなど何気ない動作がむずかしい!
足をなくす前までは、義足を使って生活している人がどんなことに困っているのだろうと思いを巡らせることはありませんでした。当たり前ですけど。
いざ義足で生活してみると、「えッ!この動きができないの?」と驚くことが多々あります。
これまでにできていた些細なことができなくなるのは、小さなことであればあるほど驚愕です。
また、安全面を考慮することにより、やればできるけど怖いからやらないことも生まれてきて、片足を切断するまでの五体満足だった期間って、本当にありがたく恵まれた生活だったんだな~なんて。。。
過去に想いを馳せるのはこれぐらいにして、早速義足ので大変なこと室内編、いってみましょう。
①高い所にのぼるのが怖い
高い所にあるものを取りたくても、踏み台にのぼるのが怖くてできません。
これまでどうしてもという状況でトライしたことはありますが、まず最初に踏み台に乗せる足を健足にするか、義足にするかですでに迷う。
そして、踏み台に乗っても足の裏の感覚があるのが片方だけなので、バランスを保つために手でどこかをつかまなければ、怖くてたまりません。
踏み台に乗って両手をあげて何かにリーチするなんて、私にとっては危険すぎて恐ろしい。
残った左足も弱いので、もし高い所でバランスを崩してしまったら大変。
薬の副作用で骨粗しょう症にもなっているので、転んだら骨が折れちゃう。
余計な苦労を生みださないためにも、高い所で立つのは避けています。
私の祖父は歳をとってから怪我で足を切断しましたが、義足になってもひとりではしごを使って屋根にのぼり、作業をしていたのを思い出します。
もう80歳を過ぎていたと思うけど、昔の人って根性があったのね、なんて。
このように、義足を使っている人全員が高い所にのぼれないかと言えばそうではなく、仕事で高所作業を難なくこなす人もいます。
私も慣れてしまえば大丈夫なのかなとは思いますが、安全を考えるとこれからも高い所に積極的にのぼることはないでしょう。
②不安定な場所に立てない
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— うくれれ (@helloukulele) March 19, 2023
人間の足は、不安定な場所に立ったとき、膝や足首の関節をつかって無意識にバランスをとりますよね。
義足だと足首が固定されているため、立っている場所の表面が柔らかかったり、角度があったりすると思うように体が動かせません。
家の中だとソファやベッドの上などのフワフワした表面に立つのはかなり難しいです。
ソファやベッドの上に立つことってそんなにないんじゃ?と思うでしょう?
でも義足になるまで意識していなかっただけで、ベッドの上の切れた電球を変えたり、ソファの後ろにある窓を拭いたり、ひょいと飛びのることって意外と多いんですよね。
自分でできないことは家族のだれかにお願いできるので大丈夫ですが、ひとり暮らしなら大変だっただろうなと思います。
③しゃがめない
床にこぼしたものをちょっと拭きとりたいときや、ベッドの下に何かが入り込んでしまったときなど、膝を十分に曲げてしゃがむ体勢を取ることは多いですよね。
私は下腿義足なので、ある程度しか膝が曲がらず、いわゆる「ヤンキー座り」ができません。
その代わりに腰をうんと曲げて、頭に血がのぼるような体勢をとるか、四つん這いになるか、お尻をつけて座ることになります。
四つん這いやお尻をつけて座ると立つときがめんどうなので、大変ですが、結局いつも頭に血をのぼらせながら、がんばって対応しています。
義足を使い始めたとき下の子は3歳でしたが、もし赤ちゃんがいるときに義足になっていたら本当に大変だったと思います。
おむつを替えるとき、抱きかかえるとき、床で遊ばせているとき、赤ちゃんを相手にするときは低い姿勢になることばかりです。
それに、夜中の授乳や夜泣き、看病などの理由で起きあがって対処する毎日。
そのたびに義足をつけては外し、つけては外しというのを繰りかえすことを考えると、赤ちゃんをもつ義足ママはほんとうに立派です。
子どもが大きくなっても、公園に遊びに連れていけば、砂場や遊具で子どもの目線に合わせて遊んであげたい。
そんなときでも、しゃがめないというのはかなり不便で大変です。
④正座できない
日本人ですから、床に座るときはやっぱり正座が落ちつきます。
しかし、義足だと膝はある程度しか曲がらず、足首にいたってはほぼ90度のまま。
正座する際には膝を折りまげて、足首はまっすぐ伸ばさなければならないので、義足ではどう考えても無理な話です。
私は海外に住んでいるので、正座をしなければならない機会はほとんどありませんが、もし将来日本でお葬式に出席することになったらどうするんだろうと考えるときがあります。
椅子がある葬祭場などは問題ないですが、自宅葬だったら?亡くなった方の家で足を投げだしてしまうのは失礼だよなぁ。
正座ができないなら美しく茶道をたしなむこともできないし、柔道や空手では座礼もできないから、指導者から怒られちゃうかもしれないですね。
⑤急な来客に対応できない
一日中義足をつけっぱなしにすることが多いですが、時には義足を外してリラックスしたい瞬間もあります。
義足もライナーも全部外して、ソファでゴロゴロしているときに急にピンポンが鳴ったりすると慌ててしまいますね。
まずライナーをつけて、靴下をはいて、義足を装着。
その間は玄関で待つお客さんに大声で「は~い、今行きます~」「すみませ~ん」「ちょっと待ってくださいね~」と言いつづけなくてはなりません。
待たせてしまい申し訳ないことをしてしまいますが、逆に自分がピンポンを押してもなかなか出てこない家主にモヤモヤせず、相手の事情を少し考えてみる癖もつきました。
⑥災害時にすぐ逃げられない
義足になってから5年経ちますが、大きな災害に遭遇することなく過ごせています。
しかし、これからも地震や火事、家の中に泥棒が入ってくるなど、思わぬ災害に合わないという保証はありません。
義足をつけているときはなんとか対応できると思いますが、私は走れないので、悪者に追いかけられたら一発で捕まってしまいます。
それよりも問題は寝ているときです。
就寝時は義足を外しているので、夜中に何かが起こっても、パッと起きてサッと走って逃げることはできません。
まずライナーをつけ、靴下をはき、義足をつけ、走れないから歩いて逃げる。
パニック時に落ち着いてこの一連の動作をこなすのも大変です。
子どもたちを守ることもできないので、「母ちゃんには構わず先に逃げな!」と言うしかありません。
でもうちの子どもたちはすごく優しいので、私を置いて逃げることを躊躇するだろうなぁ。
その場合は、旦那に心を鬼にしてもらって、私は後回しで、子どもたちだけでも連れて逃げてもらわなくちゃ。
私のことは自分でどうにかするから、どうかあなたたちだけは。。。
などという妄想をすることもあります。
⑦スリッパが履けない
膠原病が再燃して入院したとき、手足の末端神経もやられてしまい、足首から下を動かすことができませんでした。
病院で移動するためにとスリッパを自宅から持ってきてもらい、歩行器で歩く練習をしようとしました。
一歩踏みだしてみると、スリッパが足と一緒に持ちあがらず、ずるりと抜けてしまったのです。
そのときに学んだのが、スリッパは足首の力で引っかけて持ちあげるから歩けるのだということ。
これと同様のことが義足になってからも起こりました。
ただ、義足の場合は足首が90度になって動かせないので、足を一歩踏みだせばスリッパは前方へ飛んでいきます。
義足ではハイヒールばかりかスリッパも履けないというのか!?
その事実に驚愕してしまいました。
そもそもスリッパに足を入れるときも、足首が曲がらないのでとても大変です。
フックに引っかけるような感じでスリッパをすくいあげるか、手を使って義足の足部にスリッパを差し込まなければならない。
同じ理由でビーサンを履くのも至難の業なのです。
パンプスやミュールが脱げないように防止してくれる「シューズバンド」というのがありますが、こういったグッズを利用すればスリッパも履けるんじゃないかなぁ。
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自宅でスリッパを履くことは諦め、寒い冬は厚手の靴下を履いて足を保護しているのでよいのですが、問題は誰かの家や病院などに行ったとき。
スリッパを出されても履けないので、よその家にお邪魔するときは「スリッパは履けません」と断ることになります。
生足で入られるのが嫌な人にとっては迷惑だろうな。。。
一番困るのは病院や歯医者さんなどですよね。
スリッパを履かずに院内の床を歩くのはどうも気が引けます。
日本の病院は清潔第一なのでめちゃくちゃ汚くはないですが、やっぱりいい気持ちはしませんよね。
歩いても脱げないようなマイスリッパを持参するのが一番ですね。
⑧靴が履きづらい
足が2本あったころは、立ったまま玄関で靴をつっかけて、トントンしながら家を出ていくことができていましたが、義足になってからできなくなりました。
基本的には椅子に座って靴を履くのですが、そのひと手間が面倒と言えば面倒かな。
自宅はよいですが、誰かの家など外出先に椅子があるとは限りません。
座る場所がない場合は立ったまま靴を履くのですが、それが結構大変!
私は健足である左足も不安定なため、壁などに寄りかからなければ危ないのです。
気の知れた友だちや家族の家ならいいですが、知らない人が多い場所で立ったまま靴を履くのに奮闘している姿はあまり見せたくないですね。
義足がちらりと見えてしまわないように、スカートで覆いながら靴を履くこともあるので、さらに大変になります。
まぁ誰も見ていないので、堂々と奮闘すればいいだけの話なんですけど。
義足で大変だと思ったけど意外と簡単にできたこと
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義足になってから、日常的な動作を健康な2本足にどれほど頼っていたかということがよく分かりました。
そんなスタートでしたが、初期には大変だと思っていたことも、意外と簡単にできたという動作もありますので、何でも体験してみなければわからないものだなぁと。。。
大変なことだと思っていたのは、例えばこんな動作。
- 飲み物を入れたカップを持って歩く
- 台所に立ちっぱなしで料理する
- 直線歩行からの鋭いターン
- 洗面台で顔を洗う など
日常的に何でもない動作ですが、最初の頃はとっても大変でした。
目を開けておかなくちゃバランスが取れないので、顔を洗うために目をつぶるときは両肘を洗面台につけて洗っていましたね。
これから残りの人生を義足とともに歩んでいくわけですが、大変だと思ってできないことも、実は挑戦していないだけでやったらできるようになるかもしれません。
人間の適応力ってすごいですから、どんな大変なこともやってみないと分からないですしね。
また、義足の機能も日々進化していますから、今の常識ではできないことも、技術の進歩でできるようになるかもしれない。
ソケットでもこんな柔らかい素材のものを扱っている義肢装具製作所が増えれば、膝を曲げるのも簡単になる日がくるでしょう。
【製品紹介】柔らかいソケット
山形義肢研究所では"protheflex"という材料を用いた義足のソケットの製作をしています👍
大腿義足から下腿義足まで製作可能で骨の当たりやすい部分やソケットの縁などを柔らかくすることができ、装着感が良くなります👏#Protheflex #義足 #大腿義足 #下腿義足#山形 pic.twitter.com/PLKOpiS0uc— (有)山形義肢研究所 (@Yamagatagishi) February 14, 2021
(使ってみたい!)
現在でもコンピューター制御の足部もあるようですが、将来はさらに機能的になった足部が生まれ、もう少し手軽に入手できるようになるかもしれない。
可動範囲が広い足部が開発されたら、義足でも正座できるようになるかもしれません。
そんな日が来ることを楽しみに待ちつつ、自分の能力でできる範囲の「大変」を「できた」に変えていきたいと思う今日この頃です。
義足で大変なことのまとめ
義足にならなければ分からなかった大変なことって、ほんの些細なことほど驚きが大きいです。
私は健足も弱いのと、骨粗しょう症で骨を折りたくないので慎重に行動しているため、もっと健康な義足ユーザーの方たちより行動が制限されているところもあります。
YouTubeなんか観ていると、本当に義足なの?と疑ってしまうくらい美しい動きをする義足ユーザーさんもいますので、羨ましいと思うと同時に、それまでの努力もすごかったんだろうなと尊敬のまなざしで見てしまうのです。